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Oxford DNB

Oxford DNB の昨日のトップ(というか、Life of the Week というサーヴィス)は、John Sheppard でした。別名の「ジャック」のほうがよく知られていますけど、ニューゲイト監獄から2度も脱走した若い窃盗犯です。タイバンで処刑されたのは1724年、22歳のことでした。この人物については、非常に多くの伝記物が処刑の直後に書かれており、Jonathan Wild などとおなじように文学研究の対象にもなっています。ぼくにとって興味深いのは、かれが処刑台で John Applebee に「死を前にしてのことば」の印刷を託し、これこそが本物であると群衆を前に叫んだという逸話です。著者の真筆であることの究極の太鼓判ですけど、それでも多くの海賊版が出版されて、おそらくよく売れています。こういう現象をどのように解釈したらよいでしょうか。

シェパードよりも前の時期の事例をあつかった監獄付き牧師、ポール・ロレインの『談』を読みながら、派生的な問題として、著者であること(匿名でも偽名でもないこと)、あるいは伝記の信憑性の確立について考えたりします。『談』は支配的なイデオロギーの作品でもあるので、できるだけ単純な筋書きですすめるのが得策ですけれど、それとはそぐわない犯罪者個人の特定的なできごと、経歴がかならず入ってきます。【たとえば、教育をうけなかったと書くと、無学・無宗教者=犯罪者という図式が成立すると同時に、教育をうけたエリートは法を逃れられるというメッセージをあたえることにもなりかねない。】そうした部分がないと売れなかったのではないか、と想像していますが、なかなか簡単にはまとまりません。当局にとっての典型性と個々の人生の特異性、その両方にひっぱられたのが一連の伝記なのかな……。うう、まだ明晰なことばにできない……。


【授業】3512教員室の掃除。

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