「素粒子」というコラム
昨日の「いつか、ボンネットをけっ飛ばしてやる」ですが、「命あってのものだね」とご忠告をいただきました。気温とおなじく、カーッとばかりに頭に血がのぼっていたようです。反省します。ありがとうございました。
『朝日新聞』夕刊の題字の直下に、「素粒子」というコラムがあります。ためしに、どこかの検索エンジンをつかい、「朝日新聞」と「素粒子」と「下品」の三つの検索語でさがしてみてください。少なからずヒットすると思います(たとえば、Google では650件前後)。このごろの話題の一つは、フットボールW杯決勝戦において、フランス代表のジダン選手がイタリア代表マテラッツィに頭突きを見舞い、レッドカードで退場になった事件です。
この話題が最初に登場したのは決勝戦のあった日の夕方で、
あの頭突きは捨て難い。サッカーから引退するそうだし、ジダン君、ぜひ大相撲に入門せんかい。でした。ジダン選手の行為の背景を推察してみるようすはカケラもなく(想像力の枯渇)、また、大相撲をもまた見下した書き方になっています。ちなみに、この書き捨てられた文の前には、
W杯ドイツ大会終わる。ともあれ、あのアナウンサーの絶叫連呼を耳にしなくて済むのは助かる。とあり、本来的に「素粒子」さんはフットボールをはじめ、スポーツ全般がお嫌いで、そのことを通り一遍の、しかし、屈折した表現でしめしているような気がします。あたしは音声なしで中継をみていましたよ。
つぎに登場するのは、「敵基地攻撃論」が口にされたころ。
突くも退くも話題の男ジダン34歳、W杯最優秀選手にえらばれる。オチも何もない、ただの付け足しです。
そして今日は、「素粒子」欄すべてがこの話題で終始します。
泉下の大石内蔵助が、頭突き騒動に関しコメントを出した。自分の最初の愚かな書き物を恥じて、その後の展開にたいするおもねりでしょうか。それでも、この引用文中には現実と創作(歌舞伎芝居のなかだけのこと)が混同されていて、お話になりません。たとえば、浅野内匠頭の事件で喧嘩両成敗の成立しないことは、丸谷才一『忠臣蔵とは何か』1冊を読むだけでも理解できることです。せめて、大石内蔵助ではなく、大星由良助にしておけばよかったですねぇ。
殿中にて鯉口切ればお家断絶、身は切腹とは掟なれば、主君内匠頭処分は致し方なし。さりながら「鮒じゃ、鮒じゃ、鮒侍じゃ」と愚弄されし主君の無念を思うほどに、上野介におとがめなしは見逃せるところにあらず。これが我ら四十七士討ち入りの動機なり。
同様にピッチにて頭突きはレッドカードも致し方なし。されどジダンは一体何といわれしや。言葉も暴力。喧嘩両成敗であるべし。
ジダン選手の件の前にウッソーと叫んでしまったのには、このようなものもありました。
研究費不正流用のやり過ぎに注意しましょう。(早大教授用)「やり過ぎに注意」ではなく、こうしたことは絶対にやってはいけないこと、じゃないんでしょうか。こんなふうにいきなり1面でセンスも思いやりも想像力も、さらには最低限のモラルさえない文章を見せられる読者は、とても不幸です。
【授業】「原典講読」10:40~12:10
【授業】「英語で読む英米文化入門」の準備。
【仕事】チェック作業の協議。
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