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空港

もう30年以上も前の記憶ですが、小学校の教室に貼ってあった静岡県の地図のなかに空港のマークをみつけて、エッと思ったことがあります。たぶん、民間のものではなく、浜松あたりの自衛隊の基地だったのでしょう。清水・静岡付近で飛行機といえば、空高く飛んで騒音に気づくこともなく、飛行機雲をのこすときくらいしか存在感のないものでした。そういうところに住んでいた(+とてつもなく高所恐怖症の)少年にとって、自分が飛行機で移動する場面は想像しがたく、また、空港がどのような仕組みになっているかなどは、興味の対象にはなりにくいものだったといえましょう。やがて名古屋で暮らすようになったとき、上空をものすごく大きな飛行機がものすごく大きな音を立てて通過してゆくのを――ここの「ものすごく」とは、実態としてそうであったというよりは、多分に感覚的です――、何度も何度も見上げて感じいっていました。小牧にあった名古屋空港ビルには何度か遊びにいきましたし――搭乗しなければ高所恐怖症は問題ありません(笑)――、東名阪自動車道では間近を飛行機が通過してゆくのに遭遇して、息子たちと歓声をあげたりしたものです。

10年ほど前に静岡へもどってきて、また、飛行機を意識しない生活がはじまりました。じっさいに飛行機に乗った回数はもどってきてからのほうが多いですけど、県内に空港のない不便さはとくに感じていません。でも、そうではない人たちもいることはわかります。小牧から知多半島へうつったセントレアや、新幹線+αでゆく必要のある成田や羽田では不便だ、そちらに輸送の中心があっては県内のビジネスが成立しない、観光立県に集客力を増す空港は必須である、などなどと発想することは悪くないと思います。幼いころの経験を共有する友人のなかにも、ビジネスの不便さについて明言する者もいますから。

でも、ここまでこじれるとね。以下、asahi.com のマイタウン「静岡」の記事から引用します。

静岡空港 強制収用へ(2006年10月21日)

 県が島田、牧之原両市境に建設を進める静岡空港の本体部(滑走路など)の未買収地約3・6ヘクタールを巡り、県収用委員会(増田堯会長)は未買収地のうち約0・3ヘクタールについて、土地の強制収用を認める裁決を出した。同委は20日、地権者や起業者の県に裁決書を送付した。12月19日の期限までに土地明け渡しに応じない場合、県は強制的に土地の収用ができる。強制収用になれば、県内の公共工事では初めて。地権者側は、裁決を不服として、取り消し訴訟を起こす方針で、事業の「公益性」を巡る議論は司法の場で続くことになる。(大西一城)
 裁決が出されたのは、県が滑走路やターミナルビルなどの建設を進める空港本体部の中央などに位置する未買収地約3・6ヘクタールのうち、従来から土地を持っている地権者3世帯4人が所有する茶畑など約0・3ヘクタール=地図参照。裁決は18日付。残りの山林約3・3ヘクタールについては、地権者、県双方からの意見書を20日まで受け付けており、近く裁決される。
 05年7月、静岡空港は、土地収用法に基づき、土地を強制収用できるだけの公益性があると国から事業認定を受けた。これを受け県は今年2月、土地の権利取得と地権者らに土地の明け渡しを求める裁決を同委に申請。同委は今年5月から、地権者と県の主張を聴く審理を5回開催してきた。審理を通じ、地権者側は、県が行ってきたとする任意交渉は不適正であり、県が損失補償算定のもとにした土地・物件調書は作成過程に違法性があるなどとして却下の裁決を求めていた。また、空港建設には重大かつ明白な瑕疵(か・し)があるとして、国が公益性があるとして行った事業認定の無効を主張していた。
 裁決を受けて、企業誘致のため訪米中の石川嘉延知事は「公正な審理の下、県の主張がおおむね認められたと受けとめている」とコメント。県空港部の幹部は「我々としてはまた、一つの区切りがついた。裁決を受け、きちんと明け渡ししてもらえるよう、今後もお願いを続けるしかない」とし、引き続き地権者らと話し合いを続けて円満解決を目指す方針だ。一方、「県費を投じて建設している以上、一日でも早く県民に利用してもらえるように事業を進めて行く」とも話し、地権者らが明け渡しに応じない場合、行政代執行で強制収用せざるをえない考えも示している。同部によると、本体部造成工事は05年度末現在、78%が終了している。
 反対する地権者らで作る「土地収用裁決申請却下を実現する会」は、県庁で記者会見を開き、「適切な審理を経ずして下された今回の裁決は、審理過程の手続きにおいて瑕疵がある違法な行為となる可能性が極めて大きい」などと、裁決に抗議。近く代表者らで話し合いを行い、裁決取り消しを求める行政訴訟を起こすとしている。
 すでに地権者らは、国交相に事業認定を取り消すよう求める行政訴訟を静岡地裁に提訴しており、新しい訴訟は併合される可能性があるという。
 未買収地を巡っては、県は、空港西側の高い建物が制限される地域についても県収用委に権利取得を求める裁決を申請しており、11日から審理が始まっている。(下線は引用者)
公共の福祉のありかであるとか、公益性の有無であるとか、判断はもうすこし機動的であってほしいです。県は事業継続一辺倒、反対地権者は反対一辺倒では、公共善はただのちいさな利害が奪いあうパイにすぎません。現実問題として、いまはまだ本体部分の整地がすんだていど、建物部分はまだですから、この時点でもやめようと思えばやめられるし、つづけようと思えばつづけられる。「ここまできたら」ではなく、反時効取得的に(このことばで適切なんだろうか)ゆくのも悪くないんじゃないかな。あるいは、意固地になってないで最大多数の最大幸福の土台となる公共善のありかを、直接的な方法で確認すべきかも。

ちなみにあたしは、とくに不便を感じないので、空港不要派です。あと、5年おきに計画・目標を見直し、県民の意向を問うことをもとめたいと思います。

【授業】「イギリスと日本」の授業準備。
【授業】3512教員室の掃除。

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