イギリス史研究会第27回例会
研究会の幹事からいただいたメールを引用します。そして、なぜか、殊勝にも参加してみよう、という気になってきました。
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皆さま
イギリス史研究会第27回目の例会を、下記の要領で開催いたします。ご多忙中とは存じますが、何卒ご出席賜りますようお願いいたします。
今回は、イギリス近世史、都市史がご専門の中野忠氏(早稲田大学)にご報告をお願いしています。また、コメントは同じくイギリス近世史をご研究されている坂巻清氏(東北大学名誉教授)と菅原秀二氏(札幌学院大学)にお願いいたしました。なお、第28回目の例会開催は、2012年10月20日土曜日(報告者:ピーター・バーク氏)を予定しています。そちらの方も奮ってご参加下さい。10月例会の詳細については、追ってご案内させていただきます。
記
日時 6月30日(土)午後1時半 ~ 午後5時半 (開始時間にご注意下さい)
場所 青山学院大学 11号館 3階 1134教室
キャンパス内地図
http://www.aoyama.ac.jp/other/map/aoyama.html
キャンパスへのアクセス
http://www.aoyama.ac.jp/other/access/aoyama.html
報告者とテーマ
中野忠氏(早稲田大学)
近世ロンドンのマイクロ・ヒストリー ―住民の移動を中心に―
コメンテーター
坂巻清氏(東北大学名誉教授) 菅原秀二氏(札幌学院大学)
参考文献:
①中野忠「移動する貧民たち―18世紀ロンドンの救貧資料から」鈴木健夫編『地域間の歴史世界』(早稲田大学出版部、2008年)
②中野忠「寄留人、間借り人、下宿人―近世ロンドンの住宅事情の一班―」『早稲田社会科学総合研究』9巻、3号(2009年)
③中野忠「商人の「共和国」-近世ロンドンの役職と役職忌避-」『比較都市史研究』30巻、1号(2011年)
④中野忠・道重一郎・唐澤達之編『一八世紀イギリスの都市空間を探る―「都市ルネサンス」論再考―』(刀水書房、2012年)
世話役 平田雅博(青山学院大学)・坂下史(東京女子大学)
連絡先: 東京女子大学 現代教養学部
以下、中野忠氏よりいただいた報告要旨です。ご参照下さい。
中野 忠「近世ロンドンのマイクロ・ヒストリー―住民の移動を中心に―」(仮題)
16世紀初頭には5万にも満たなかったロンドンの人口は、17世紀末には50万を超え、その後、20世紀に至るまで成長は続く。本報告の対象とするのは、この長い都市化過程のうちの一部、17世紀から18世紀にかけての時代、特に17世紀後半である。
「都市化」という歴史現象には様々な側面や方向性がある。一般に都市化は人口の増加を伴うが、それは既存の「都市的定住地」の人口密度が高まることによっても起こるし、都市的空間が外延的に広がることによってもたらされる場合もある。また、ある都市史研究家が「質的都市化」と呼んだように、「都市的」生活様式や行動パターン―その定義は多様でありうるが―の広がりや高度化、あるいはそれに伴う社会・経済構造の変化として「都市化」を捉えることもできる。近世ロンドンでは、これらいずれの側面での「都市化」も顕著に進んだ。この多面的な都市化過程への一つのアプローチとして、本報告では、ロンドン・シティを構成する地域社会(ここでは具体的には教区および区)と住人、および移動に焦点を絞り、その実態と歴史的意義を考えてみる。この問題は、ロンドンの都市化の過程を考察する上で、けっして瑣末とはいえない論点である。大きな理由の一つは、V.パール以後のロンドン市研究が強調してきたように、近世ロンドン市の統治が、地域社会を一つの基盤とし、地域の役職を通じての住民参加によって支えられてきたとされるからである。
本報告では、およそ次の三点について議論を進める予定である。(一)いくつかの地域社会の事例について、住民の入れ替わりを検討し、その頻度がきわめて高かったことを、推定の根拠となる課税記録などの史料の実例を示しながら明らかにする。(二)都市住民の移動性の高さは、この時代のロンドンに特有なものではなかった。いわゆる「都市墓場」説、ヨーロッパ型結婚などの長期的・一般的背景、徒弟制度や救貧法などの制度のイギリス固有のあり方、当時のロンドンの特殊な事情などに言及しながら、ロンドン住民の移動というミクロの問題を、より広い視点から検討する。(三)移動が高まる一方で、都市化の進展とともに、住宅問題、公衆衛生、交通、治安維持、防火、救貧など、地域社会が対処すべき課題はかえって増大する。そうしたなかで、地域社会はどの程度、コミュニティとしての性格を保っていたのか。また役職制度はどのようなかたちで、どの程度機能していたのか。本報告ではこの問題についても展望してみたい。
本報告ではかぎられた例しかとりあげられないが、現実には、シティの地域社会はきわめて多様性に富んでいた。またいうまでもなく、地域社会は、ロンドンという都市社会が安定的に維持され拡大していくための唯一の機能単位ではなかった。さらに17世紀以降、ロンドンは市壁を越えて外延的に拡がり、シティは人口の面では、重要な場所ではなくなってくる。その意味で、本報告は近世ロンドン史のごく限られた側面を検討するものでしかない。
これを補うために、本報告に続き、近世ロンドン史を検討するために重要な別の側面について、2人のコメンテーターによる報告が行なわれる。
<コメント>
1.坂巻 清
「近世ロンドンと社団的秩序」
2.菅原 秀二
「ウェストミンスターとバージェス裁判所」(仮題)
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参考文献
<報告>
中野忠「移動する貧民たち―18世紀ロンドンの救貧資料から」鈴木健夫編『地域間の歴史世界』(早稲田大学出版部、2008年)
中野忠「寄留人、間借り人、下宿人―近世ロンドンの住宅事情の一班―」『早稲田社会科学総合究』9巻、3号(2009年)
中野忠「商人の「共和国」-近世ロンドンの役職と役職忌避-」『比較都市史研究』30巻、1号
(2011年)
<コメント>
坂巻清「イギリス近世国家とロンドン」『立正史学』第109号(2011年)
中野忠・道重一郎・唐澤達之編『一八世紀イギリスの都市空間を探る―「都市ルネサンス」論再考―』(刀水書房、2012年)
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