イギリス史研究会第30回例会のご案内
研究会の幹事の方からのメールを転載します。
イギリス史研究会第30回目の例会を下記の要領で開催いたします。
今回は、19世紀イギリスの工場法とジェンダーを中心に研究されてきている竹内敬子氏にご報告をお願いしています。また、コメンテーターには、19世紀イギリスの労使関係・労務管理史や機械産業史だけでなく、近年さらに幅広い活躍をされている小野塚知二氏にお願いいたしました。ご多忙中とは存じますが、何卒ご出席賜りますようお願いいたします。
なお、第31回目の例会開催は、6月の土曜日を予定していますが、詳細については後日ご案内をさせていただきます。そちらの方も奮ってご参加願います。
今回より、世話役が平田雅博氏と坂下史氏に代わり新井由紀夫と佐藤清隆が担当することになりました。これからも、何卒、宜しくお願いいたします。
記
日時 3月2日(土)午後2時15分 ~ 午後6時
場所 明治大学駿河台校舎リバティ・タワー119FG19階
(エレベーターは17階で乗り換えてください)
キャンパスへのアクセス
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
キャンパス内マップ
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/campus.html
報告者とテーマ
竹内敬子氏(成蹊大学)
「ジェンダー史の現在、そして、これから…」
コメンテーター
小野塚 知二氏(東京大学)
報告者の関連業績:
「ジェンダー史の現在―『実りの時』を越えて」社会経済史学会編『社会経済史学会80周年記念 社会経済史学の課題と展望』(有斐閣)
「社会政策学会第120回大会テーマ別分科会『近代日本の女性労働』をめぐって」『大原社会問題研究所』2011年9月号。
「イギリス工場法史研究が拓く視界―ジェンダー視点からの挑戦」河村貞枝『イギリス近現代女性史入門』(青木書店))
世話役 新井由紀夫(お茶の水女子大学)・佐藤清隆(明治大学)
連絡先: 佐藤清隆 文学部
以下、竹内敬子氏によるご報告の内容紹介です。ご参照下さい。
1960年代末から1970年代初頭の歴史学へのジェンダー視点の導入以来、すでに約40年が経つ。ジェンダー史研究は、それまで「隠され」「不可視化」されてきた女性の過去の経験に光をあてる「新しい女性史」として出発し、「人間=男性」を前提とする歴史解釈に揺さぶりをかけ、多彩で豊かな成果をあげ、歴史学に新たな地平を切り開いてきた。報告者の研究テーマであるイギリス工場法の歴史研究においても、かつては「労働条件改善」を目指すという点で一致して肯定的にとらえられていた同法が、そのジェンダー・スペシフィックな性格が女性の労働市場における地位に与える否定的な影響が明らかにされ、さらには、男性の健康問題の無視など、男性にも否定的な影響があったことが指摘されるにいたっている。
本報告では、とりわけ、ジェンダーの「語り」の作用が、女性と男性の階層的なあり方のみでなく、国民国家、奴隷制や植民地・帝国の形成に果たした役割についての研究成果を紹介したい。たとえば、フランス革命後の新しい国家の建築の際には、ジェンダーの違いが制度化され、家族のイメージや家族に対する情感をテコに国家を生得的で有機的に発展するコミュニティという国民の意識が形成されたことはその一例である。
ジェンダー史の発展は、文化的社会的性であるジェンダーが可変であることを示し、ジェンダー平等を目指す人々に変革の可能性の確信を与え、実際にさまざまな変革が行われた。40年前と現在の異なった位相の中で、新たなジェンダー史の発展の方向や可能性の模索が、今求められている。
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