イギリス史研究会第32回例会のご案内
研究会の世話役の方から配信されたメールを引用します。連絡先情報など、一部は削除しました。ご了解くださいませ。
しかし、お知らせをいただくばかりで一度も参加したことがないな \(^^:;)...
イギリス史研究会会員のみなさま
イギリス史研究会第32回目の例会を下記の要領で開催いたします。今回は、アングロ・サクソン期のマーシアを研究されている内川勇太氏にご報告をお願いしています。また、コメンテーターには、鶴島博和氏にお願いいたしました。ご多忙中とは存じますが、何卒ご出席賜りますようお願いいたします。なお昨年10月以降、例会の開催が大幅に遅れましたことを心よりお詫び申し上げます。これからも、何卒、宜しくお願いいたします。新井由紀夫
記
日時 6月14日(土)午後2時 ~ 午後6時
場所 明治大学駿河台校舎リバティ・タワー1103番教室(10階)
キャンパスへのアクセス
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
キャンパス内マップ
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/campus.html
報告者とテーマ
内川 勇太氏(東京大学大学院博士課程)
「7世紀から11世紀にかけてのウースター司教区/フウィッチェ王国:政治的変遷を超えた連続性の考察」
コメンテーター
鶴島 博和氏(熊本大学)
世話役 新井由紀夫(お茶の水女子大学)・佐藤清隆(明治大学)
以下、内川勇太氏によるご報告の内容紹介です。ご参照下さい。
現在のグロスターシャー、ウースターシャー、ウォリックシャー南西部、ウェストミッドランズの一部にほぼ重なる地域は7世紀半ばからマーシア王国の従属王国としてアングロ=サクソン系のフウィッチェ王国が存在し、679(680)年にはこの地域を管轄するためにウースター司教座が置かれた。フウィッチェ王国は以後一世紀の間にマーシア王国に併合され、一度は歴史の表舞台から姿を消すが、一方でウースター司教区は中世を通じて存続する。そして9世紀後半にマーシアの東半分がヴァイキングの手に落ちると、ウースター、グロスターを中心とするこの地域はマーシア王国の中心地となる。マーシア王国は918年にはウェセックスに併合され、この地域はイングランド王国の一地域になるが、その一体性は継続し、980年代に至るまで、ウースター司教はフウィッチェ司教と認識されていた。この地域がシャイアに分割されるのはおそらく11世紀初頭を待つことになる。
このように度重なる政治的変遷を経つつも、一体性を持った地域として長期間存続したウースター司教区/フイッチェ王国だが、日本においてはほとんど認識すらされていないと思われる。それは一つには未だに「七王国」概念が影響力を保っていることに起因する。この概念はアングロ=サクソン時代を理解する際、弊害にこそなれ、助けには決してならない。そこで本報告はこの概念を否定し、当該時期の歴史の複合性を示すケーススタディとしての意味を持つと考えられる。
本報告では証書を主な史料とし、年代記、聖人伝等の叙述史料や地名、人名学、考古学の成果を援用しつつ、以下の2点について論ずる。まずフイッチェの支配者の地位に関して、最初期には王であったが、徐々にマーシア王への従属の度合いを強め、9世紀初頭にはマーシアの伯(エアルドルマン)にまで格下げされるという見方が主流だが、この点を批判的に検討する。
また9世紀初頭以後フイッチェの支配者の系譜は明らかではないが、9世紀末に現れるマーシアの支配者エゼルレッドとそれ以前の支配者の間に何らかの血縁・姻戚関係あるいは地縁関係を見出すことができるか試みる。
最後にこの地域はイングランド王国の歴史の中で数多くの重要な事象が生み出された場所でもある。たとえば証書についてはイングランド最古のカーチュラリーはウースターで作成され、カイログラフの使用もウースターに顕著である。またウースターは10世紀半ばからの修道院改革運動の中心となる。したがってこのようなウースター/フイッチェ王国地域がイングランド統一の過程にどのように位置づけられるのかという点も考えてみたい。
参考文献
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Brooks, N. P. and C. R. E. Cubitt, St Oswald of Worcester: Life and Influence (Leicester, 1996).
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Gelling, M. The West Midlands in the Early Middle Ages (Leicester, 1992).
Hooke, D., The Anglo-Saxon Landscape: The Kingdom of the Hwicce (Manchester, 1985).
Sims-Williams, P., Religion and Literature in Western England, 600-800 (Cambridge, 1990).
Yeates, S. J., The Tribe of Witches: The Religion of the Dobunii and Hwicce (Oxford, 2008).
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