イギリス史研究会第33回例会のご案内
幹事の方からご連絡をいただきました。前回にひきつづき、いきたいな(いけるかどうかは別にして)と思う報告です。
イギリス史研究会第33回目の例会を下記の要領で開催いたします。今回は、近世以降のイギリス社会における統治の問題を、人々のモラルの変容に注目しながら研究されてきている坂下史氏にご報告をお願いしています。ご多忙中とは存じますが、何卒ご出席賜りますようお願いいたします。なお、第34回目の例会開催は、来年3月の土曜日を予定していますが、詳細については後日ご案内をさせていただきます。そちらの方も奮ってご参加願います。なお、例会回数をある会から間違ってカウントしていましたので、今回、訂正させていただきました。正確には今回が第33回目になります。これからも、何卒宜しくお願いいたします。
記
日時 12月20日(土)午後2時 〜 午後5時半
場所 明治大学駿河台校舎 リバティ・タワー1123教室(12階)
報告者とテーマ
坂下史氏(東京女子大学)
「都市のなかの農業——18世紀末から19世紀初頭のイングランドにおける農業協会の活動」
参考文献:
Arthur Burns and Joanna Innes(eds.), Rethinking the age of reform: Britain 1780-1850 (2003). See especially‘Introduction’(by Innes and Burns).
G.E. Mingay (ed.), The Agrarian History of England and Wales, VI:1750-1850 (1989). See especially Part I, Chap. 4, III,‘Agricultural literature and societies’(by Nicholas Goddard).
ポール・ラングフォード編『オックスフォードブリテン諸島の歴史8 18世紀 1688年—1815年』(慶應義塾大学出版会、2013 年)。「序論」、「第 3 章」、特に「第5章」参照。
世話役 新井由紀夫(お茶の水女子大学)・佐藤清隆(明治大学)
連絡先: 佐藤清隆 文学部
以下、坂下史氏によるご報告の内容紹介です。ご参照下さい。
要旨
要旨
本報告は、近代イギリスの民間団体の一種である農業協会の活動に、従来とは若干異なる角度から光を当てる。農業協会の多くは、18世紀半ば以降に各地に設立され、情報の結節点として機能した。その活動は狭義の農業振興だけにとどまらなかったが、これは当時の農業が、農学として学問の一部を構成し、食料増産や産業振興を通じて経済に直結し、さらに国家や人類社会の福利の問題にも連なる分野であったことに関係する。報告では、19世紀初頭のイングランドに約40あったとされる地方の農業協会のうち、比較的史料の状況がよい「バースおよび西イングランド農業協会」[1777年設立]を事例に取り上げる。ここで検討対象とする時期のイギリスでは、アメリカ独立戦争の敗北を契機に社会や体制への信頼が揺らぎ、変革の必要性が差し迫ったものとして感じられていたとされる。こうして、議会をはじめ、政府行政、法律、教会、医療、芸術など様々な場で、制度やモラルを改革する試みが見られた。そうした動きは地域レヴェルでもあったのだが、それらは政治史、社会史、農業史、社会政策史などの各分野で、別々に取り上げられがちだった。他方、農業協会に関しては、19世紀農業の研究が主に経済史の立場からこれに言及してきた。しかし、創設期の18世紀を含め、また都市の社会文化史や「改革の時代」の風潮との連関を意識して、それらを分析した研究はあまり多くない。報告では、都市を拠点に農業協会を支えた「二流知識人(ローカルエリート)」の役割に着目しつつ、この団体の活動を地域レヴェルでの「改革」との関連でとらえたい。そしてそれは、ローカルエリートによる都市部と農村部を跨ぐ公益活動であり、彼らの公共精神が農業振興を核にして現出したのが農業協会であったこと、協会を中心に草の根レヴェルに降り立った後期啓蒙の思想が行き交う空間が機能していたこと、を明らかにしていきたい。
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