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イギリス史研究会第39回例会のご案内

幹事の方からいただいたメールの一部を修整して登載します。

イギリス史研究会第39回例会のご案内

イギリス史研究会第39回例会を下記の要領で開催いたします。今回は、18・19世紀イギリスの科学・技術と社会の関係について、時間意識、時計技術、海軍における科学研究、探検や地図・海図作成など中心に研究されている石橋悠人氏にご報告をお願いしています。また、コメンテーターには、イギリス近代の海事や社会福祉の問題を中心に精力的に研究されている金澤周作氏にお引き受けいただきました。ご多忙中とは存じますが、何卒ご出席賜りますようお願い申し上げます。

なお、10月22日(土)開催予定の第40回例会は、水井万里子氏(九州工業大学)にご報告をお願いしています。詳細については後日改めてご案内をさせていただきます。そちらの方も奮ってご参加願います。何卒、宜しくお願いいたします。


日時  6月25日(土)午後2時 ~ 午後6時
会場  明治大学駿河台校舎リバティ・タワー1133番教室(13階)
報告者とテーマ
石橋 悠人 氏(新潟大学)
「時計時間の移植と管理――イギリス帝国の植民地天文台と時報技術」
コメンテーター
金澤 周作氏(京都大学)

[関連業績]
石橋悠人「19世紀イギリスにおける標準時の普及とその社会的影響――グリニッジ時報サー
ビスを事例に」『社会経済史学』 79巻4号、2014年
Ishibashi, Y. “In Pursuit of Accurate Timekeeping: Liverpool and Victorian Electrical Horology,” Annals of Science 71 (4), 2014.

世話役 新井由紀夫(お茶の水女子大学)・佐藤清隆(明治大学)

以下、石橋悠人氏によるご報告の要旨です。ご参照下さい。

時計時間の移植と管理――イギリス帝国の植民地天文台と時報技術
石橋 悠人

19世紀中葉以降、鉄道・蒸気船・海底電信ケーブルに代表される交通・海運・情報通信網の飛躍的な発達にともなう人、商品、資本、知識のグローバルな移動は、時間と空間に関する制度・科学技術・人々の認識の大きな変容を促した。1884年にグリニッジ本初子午線の基準化が国際的に承認され、世界標準時の形成に向けた端緒をなしたことは、そうした「世界の一体化」の一局面において、時間と空間の均質性と正確性の向上が必要とされたことを示唆している。しかし、標準時・本初子午線の制度化に加えて、19世紀後半のグリニッジ天文台は、オーストラリア、インド、南アフリカ、カナダなどの植民地に設置された天文台と緊密なネットワークを確立し、帝国各地における公共時計、報時球、時報発信サービスのインフラ整備を支援することで、正確な時間の普及に寄与していたことはあまり知られていない。科学技術の研究・利用・実践と帝国(主義)の共生に関しては、既に国内外で豊富な研究の蓄積が見られるが、この天文研究、気象観測、測量・地図作成を目的とする植民地天文台の歴史は、これまで詳しく検討されてこなかったからである。植民地天文台による時間伝達の取り組みは、正確な時間の把握・通知を通して世界的な海洋帝国を往来する商船・軍艦の航海術に貢献するとともに、時計塔や公共時計の管理を通じて、植民地都市のローカルな社会生活にも少なからぬ影響を与えた。本報告では、この植民地天文台ネットワークの特徴、その内部におけるグリニッジ天文台長の権威と専門知の提供、そしてロンドンから各植民地への時報技術の移植を考察する。これにより、ヨーロッパ近代の時間意識が世界的に伝播していく過程の一端を、具体的な次元で捉えることを目標としたい。

(主要参考文献)
石橋悠人「19世紀イギリスにおける標準時の普及とその社会的影響――グリニッジ時報サービスを事例に」『社会経済史学』 79巻4号、2014年
Bartky, I. One Time Fits All: the Campaigns for Global Uniformity (Stanford U. P., 2007)
Ishibashi, Y. “In Pursuit of Accurate Timekeeping: Liverpool and Victorian Electrical Horology,” Annals of Science 71 (4), 2014
Nanni, G. The Colonisation of Time: Ritual, Routine and Resistance in the British Empire (Manchester U. P., 2012)
Ogle, V. The Global Transformation of Time 1870-1950 (Harvard U. P., 2015)

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