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イギリス史研究会第40回例会のお知らせ

幹事の方からのメールを転載します。

イギリス史研究会のみなさま

※今回は、10月23日(日)に駿河台校舎でホームカミングデーが開催されることから、会場を和泉校舎(京王線・井の頭線明大前駅)に変更いたしました。駅から徒歩5~10分です。お間違えなきよう、よろしくお願いいたします。

イギリス史研究会第40回例会を下記の要領で開催いたします。今回は、近世・近代のイギリス東インド会社やコーンウォルのすず鉱業の歴史(女性史も含む)などを研究されている水井万里子氏にご報告をお願いしています。また、コメンテーターには、18世紀イギリスの議会政治史を中心に研究されている青木康氏と17世紀のラテン・アメリカ史、中南米国際商業史を研究されている伏見岳志氏にお引き受けいただきました。ご多忙中とは存じますが、何卒ご出席賜りますようお願い申し上げます。

なお、今回だけは事情により、会場は駿河台校舎ではなく和泉校舎(明大前駅)になります。くれぐれもお間違のないようお願いいたします。正門入って左手の新しい建物になります。12月開催予定の第41回例会については、後日改めてご案内をさせていただきます。そちらの方も奮ってご参加願います。何卒、宜しくお願いいたします。


日時: 10月22日(土)午後2時 ~ 午後6時
会場: 明治大学和泉校舎(京王線・井之頭線明大前駅)要注意!
 メディア棟304教室(3階)
報告者とテーマ
水井 万里子 氏(九州工業大学)
「近世・近代コーンウォル地域史研究の展望――すずの『資源連鎖』から――」
コメンテーター
青木 康 氏(立教大学文学部)
伏見 岳志 氏(慶応大学商学部)
[関連業績]
水井万里子「近世イギリスのスタナリ議会」青木康編『イギリス近世・近代史と議会制統治』吉田書店、2015年、253~276頁。
水井万里子「近代コーンウォルにみる女性たち―鉱業と移動の視点から―」水井万里子、杉浦未樹、伏見岳志、松井洋子編著『世界史のなかの女性たち』勉誠出版、2015年、74~83頁。

世話役: 新井由紀夫(お茶の水女子大学)・佐藤清隆(明治大学)
連絡先: 佐藤清隆 文学部

以下、水井万里子氏によるご報告の要旨です。ご参照下さい。

「近世・近代コーンウォル地域史研究の展望 ―すずの『資源連鎖』から―」

 水井万里子

<概要>
近世近代コーンウォルの鉱山地域は、イングランドの主要な輸出品である金属資源の一つである「すず」の生産を担った。すず鉱業は従来、同地の地域史、イギリス鉱業史のテーマとして研究されてきたが、本報告ではこの資源がつなぐ物と人の「連鎖」を通して、ナショナルな歴史背景のみならず、世界史と密接に関連しつつ地域史が展開したことを実証的に検討する。国内で王権=コーンウォル公領財源であったすず鉱業は、地元鉱山関係者、ロンドンの輸出商人、国内加工業者、王権歳入徴収請負人等の利益集団と関わり、中央の財務官僚による利害調整が行われるケースが多く、このような状況は19世紀半ばに公領がもつ諸権利が失われるまで続いた。また、この資源連鎖は、コーンウォルから上記の利益集団を介して海外へとつながっていた。中世以来ヨーロッパ大陸諸地域への主要な輸出品であったコーンウォル産のすずは、以下の3つの時期①17世紀初頭、②18世紀初頭、③19世紀初頭に地中海東部やインド洋沿岸の諸港および広東など、ヨーロッパ外の市場への輸出傾向が強まったことが特徴で、輸出利害が産業全体に強い影響力をもった。しかし、19世紀半ば前にすずの国内外市場価格が下落すると、アジア他産すずとの競合もあり、経済的に困窮した同地域鉱山関係者の海外鉱山への移動が大規模に始まった。このことは貧困を起因とする世界規模の離散「コーニッシュ・ディアスポラ」として地域史で議論されるが、オーストラリア銅鉱山への移民事例を除いて十分実証が進んでいない。これまですず輸出研究で収集してきたイギリス東インド会社等の商業史料群には、植民地建設過程の社会史研究に重要な情報が含まれており、これらの商業史・地域史・政治史の史料を利用すれば、19世紀前半から20世紀初頭までアメリカ大陸、南アフリカなどへも大量に移動したコーンウォル鉱夫たち(‘the Cousin Jacks’)の初期の動態が実証可能と推察されるため、上記の史料研究の観点からコーンウォル地域史研究の展望を提示したい。

[主要参考文献]
Bowen, H.V., ‘Sinews of Trade and Empire: the Supply of Commodity Exports to the East India Company during the Late Eighteenth Century’, Economic History Review, 55(3), 2002, pp.466-486.
Stern, P., The Company-State, Oxford, 2011.
Payton, P., The Cornish Overseas, Exeter, 2015.
水井万里子「イギリス鉱物資源史の視角――環境の資源化・資源連鎖・共有ルールの論点から」水島司編『環境と歴史学』勉誠出版、2010年、224~232頁。
水井万里子「近世イギリスのスタナリ議会」青木康編『イギリス近世・近代史と議会制統治』吉田書店、2015年、253~276頁。
水井万里子「近代コーンウォルにみる女性たち――鉱業と移動の視点から――」水井万里子、杉浦未樹、伏見岳志、松井洋子編著『世界史のなかの女性たち』勉誠出版、2015年、74~83頁。
水井万里子「イギリス東インド会社の初期インド植民都市建設と女性」水井万里子、伏見岳志、太田淳、松井洋子、杉浦未樹編著『女性から描く世界史』勉誠出版、2016 年、220~237頁。

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