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イギリス史研究会第42回例会のご案内

幹事の方からいただいたメールを転載します。

─────────────────────────(ここから)
イギリス史研究会第42回例会を下記の要領で開催いたします。

今回は、ドイツ近代都市史・都市計画史やイギリスの都市計画運動などについて研究されている馬場哲氏にご報告をお願いしています。馬場氏は、ドイツとの関連でイギリスの都市計画運動に多大な関心を持たれ、昨年刊行の著書『ドイツ都市計画の社会経済史』でも、第Ⅳ部はその研究に当てられています。また、コメンテーターには、『近代英国実業家たちの世界:資本主義とクエイカー派』(1994年)や『禁欲と改善:近代資本主義形成の精神的支柱』(2017年)などの著書で知られ、またB・シーボーム・ラウントリーなどにも強い関心をお持ちの山本通氏にお引き受けいただきました。ご多忙中とは存じますが、何卒ご出席賜りますようお願い申し上げます。

10月開催予定の第43回例会については、後日改めてご案内をさせていただきます。そちらの方も奮ってご参加願います。何卒、宜しくお願いいたします。


日時  7月1日(土)午後2時 ~ 午後6時
会場  明治大学駿河台校舎(JR御茶ノ水駅)リバティ・タワー1146教室(14階)

報告者とテーマ
馬場 哲 氏(東京大学大学院経済学研究科)
「20世紀初頭におけるイギリス都市計画運動とドイツ」

コメンテーター
山本 通 氏(神奈川大学名誉教授)

[関連業績]
馬場哲(2016)『ドイツ都市計画の社会経済史』東京大学出版会
Ashworth, W. (1954), The Genesis of Modern British Town Planning: A Study in Economic and Social History of the Nineteenth and Twentieth Centuries, London.〔邦訳W・アシュワース(下總薫監訳)(1987)『イギリス田園都市の社会史―近代都市計画の誕生―』御茶の水書房〕

世話役 新井由紀夫(お茶の水女子大学)・佐藤清隆(明治大学)

【連絡】
次回以降、世話役は佐藤が退き、新井、永島剛(専修大学)、山本信太郎(神奈川大学)が担当することになります。また連絡担当は新井から山本に交代いたします。今後とも宜しくお願いいたします。

以下、馬場哲氏によるご報告の要旨です。ご参照下さい。

  〈報告テーマ〉
「20世紀初頭におけるイギリス都市計画運動とドイツ」
馬場 哲

【報告要旨】
19世紀以降の欧米先進諸国でみられた都市化の進展と都市問題の深刻化、こうした変化への対応としての都市政策・都市計画の成立と都市行政の発展は、各国ごとの差異を含みながら共通点も多く、また同時並行的に進行した。その結果、19世紀末から20世紀初頭にかけて、他国への訪問・調査や文献の紹介、さらに国際会議などの形で都市政策・都市計画に関する情報が盛んに交換された。当時ドイツはこの分野で「先進的」と言われたが、アメリカや日本などと並んで、イギリスもまたドイツの都市行政・都市計画に大きな関心を寄せた国であった。
いうまでもなく、各国の影響関係は一方向的ではなく、英独に限っても双方向的であり、イギリスの低層低密度住宅、住宅のレイアウト、「田園都市」構想、あるいはオクタヴィア・ヒル(Octavia Hill)の住宅管理方法などがドイツに影響を与えたり移植されたりしたことも忘れてはならないが、本報告は、報告者自身のドイツ近代都市史・都市計画史研究を前提として、ドイツからの刺激が田園都市構想などと並んでイギリスにおける都市計画論議を進める上で大きな刺激となったことを重視したい。
アシュワース(William Ashworth)は、1954年の時点で以下のような構図を打ち出している。都市環境の改善を、それまでの公衆衛生と住宅改良だけでなくより総合的な「都市計画」に求める動きが、1890年以降の20年間に急速に成長した。一方でボーンヴィル、ポートサンライト、ハムステッド田園郊外、レッチワース田園都市などの建設の動きがあったが、他方で自治体レベルの住宅政策から都市計画へと進んだホースフォール(Thomas Coglan Horsfall)、ネトルフォールド(John Sutton Nettlefold)やリッチモンドのトンプソン(William Thompson)らが住宅改革運動を展開した。とくにホースフォールはその過程でドイツの住宅政策・都市計画に関心を示し、そのイギリスへの紹介者としての役割を果たした。そしてイギリスにおける都市計画運動は、両者の動きが田園都市協会や全国住宅改革評議会などの団体を受け皿として合流する形で本格化し、1909年住宅・都市計画等法成立に至ったのである。しかし、とくに日本では田園都市に話を収斂させる傾向が強く、住宅改革運動の系譜の検討は十分ではない。
  本報告では、馬場哲(2016)第4部にもとづいて、マンチェスターのフィランスロピストであったT・C・ホースフォールとバーミンガムのカウンシル議員・住宅委員長を務めたJ・S・ネトルフォールドの思想と活動に注目するが、余裕があれば、イギリス都市計画運動に中央政府が対応するなかで1909年法成立に至る過程も展望したいと考えている。

【主要参考文献】
馬場哲(2016)『ドイツ都市計画の社会経済史』東京大学出版会
Ashworth, W.(1954), The Genesis of Modern British Town Planning: A Study in Economic and Social History of the Nineteenth and Twentieth Centuries, London.〔邦訳W・アシュワース(下總薫監訳)(1987)『イギリス田園都市の社会史―近代都市計画の誕生―』御茶の水書房〕
Cherry, G.E. (1974), The Evolution of British Town Planning, Leonard Hill, Leighton Buzzard.
Horsfall, T.C.(1904), The Improvement of the Dwellings and Surroundings of the People : the Example of Germany; Supplement to the Report of the Manchester and Salford Citizens' Association, etc. Manchester.
Nettlefold, J.S.(1908), Practical Housing, Letchworth.
Sutcliffe, A. (1981), Towards the Planned City: Germany, Britain, the United States and France 1780-1914, Oxford.

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