レポート作成要領
職場ではこの4月からカリキュラムの大幅な変更がありました。主眼の一つは学術スキル/アカデミックリテラシーの修練です。ノートのとり方、本の読み方、PCのスキル、プレゼンテーションのやり方、テーマの探し方、プレゼンテーションのやり方などを身につけることが、それぞれの授業科目の到達目標に記されています。
レポートの作成作法の修得もだいじな目標の一つです。とはいえ、入試で150文字ほどを書かせると「長い」とされる世界にいた人たちが、突然に「たかが2000字でしょ」の空間に放りだされたなら茫然としてもおかしくありません。なかなかむずかしいことと予想します。習うより慣れろ、は一面の真実ですが、しかし、よほど「書く」が好きな人でないと、あるいは、「ノンストップ・ライティング」などを自分に課して訓練しないと、レポートは書けるようにならないでしょう。
ちなみに、アタシは配当年次2・3の授業でレポート評価をしてきました。注をつけるとか、文体に気をくばるとか、けっこうきまりの多いレポートですから、作成要領を読むだけで疲れます。それでも、「レポートにはこういう文章を書いてね」を言語化しているつもりなので、さまよえる1年生に読んでもらおうかと公開しておきましょう。まぁ、誰かにとって何かの参考になるかもしれないと思わなくもないので(こういう文章を書いたらすぐに朱入れするはず ヾ(^。^*)まぁまぁ
途中で飽きたりしたら投げ出してください。あるいは、ご立腹のむきはご容赦あれ。
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形式
字数:全角で計算して1,800から2,200字まで → 学術論文の1節分に該当する長さ
字数は本文のみの計算であり、表紙、図表などの資料、注、参考文献一覧はふくみません。本文の末尾におよその総字数を記入してください。
用紙:A4
A4用紙に作成する場合は、40字×20行/1枚=800字が規準です。上下左右の余白を充分に(1インチ≒25ミリ以上)設定します。1行の字数が増えても支障はありませんが、1 ページの行数は20行以上に設定してはいけません。コメントをつけるためです。
表紙、本文、参考文献表の順に綴じ、表紙をのぞく各ページにページ番号をふり、表紙には、タイトル、学籍番号、氏名を記入します。各ページのヘッダは必要ありません。
書式・文体:文章作成には通則があります。たとえば、
横書きではアラビア数字をもちい、アラビア数字とアルファベットは半角にする。
「に関わらず」と「にも拘らず」を混同しない。
段落は 1 行空きでなく 1 字下げで示す。
二重かぎかっこ(『』)は、書名・誌名を示すとき、または、「 」内で「 」をつかうとき以外には使用しない。
などです。
注をつけた論説文ですから、口語表現(たとえば、「そんな」「どんどん」などの語や「です・ます」調の文体)はふさわしくありません。
コンピュータの IME の漢字変換を多用しない。手書きでつかわないような漢字や、「もの」 「こと」「とき」などの形式的な名詞の漢字(「物」「事」「時」)はひらきましょう。
規定
1. 課題:授業でふれた論点について論じる。 選択する論点は自由ですが、ただし、授業のテーマよく考えてください。「事情をくわしく調べる」「実際はどのようであったか」に類するテーマは好ましくないでしょう。なぜなら、ひととおりの事情を書き、おもしろかった/悲しいです、と印象でおわってしまいがちです。
論じる以上は、複数の文献・資料をさがして利用し、議論しましょう。論説文の基本となる、序論・本論・結論の構成がはっきりとわかるように、したがって、段落は少なくとも三つをそなえるようにしなければなりません。
本論の部分は、図書館やウェブ上をはじめとする資料収集、および、その資料の分析・読解からなる作業に依拠するものになります。結論部では、「○○という事項について、Aという理解(説、考え、見解、判断)と B という理解がある。自分は□□という理由/根拠をもってAを支持する」と示せるようにしましょう。
2. 参考文献を明示する。 印刷・出版されているものが優先される。必要な情報は、
著作の場合 → 著者名、書名、出版社名、出版年(順不同)
論文や記事の場合 → 著者名、タイトル、雑誌・新聞名、出版年、掲載ページ(順不同)
ウェブ上の記述は次善以下の位置づけです。ほとんどは根拠を明示せず、また匿名のもとに 書かれているものは信用できません。このレポート課題では文献やデータの調査力も問われています。授業の資料やレジュメは参考文献にできません。自分で調べましょう。
3. 注を記す=根拠にもとづいて書く。 かならず注をつけなければならない。注は、「この部分は自分が現物やデータを確認したのではなく、他人が確認して書いてくれたものに依拠した」、あるいは、「この著者の見解にこの部 分は賛成して/反対している」と明示するため、また、著者の文章をそのまま引用する(引用部分はかならず「 」でくくる)ためにつけます。つまりは、自分の見解がひとりよがりでなく、根拠もなしに勝手にいいかげんなことを述べているものではないことの証です。自分の書 いたことが何に依拠しているのかを意識しながら、レポートを作成することになります。
ただし、引用箇所の注しかないのはいけません。引用はあくまで従であり、主となるべきは 書き手の論旨であるからです。引用だらけでは、レポートが手の運動=書きうつしになってしま います。引用ではなく、論拠として要約したときの注をこころがけてください。
その他
いかなるレポートの作成においても禁じられるのが剽窃行為です。だれかの文章を利用するさいには、その著者に敬意をはらう意味でも、かならず注記しなければなりません。剽窃行為は退学に処されることもあります。
執筆のさいの注意事項
「第三者的」な記述(佐々木健一『論文ゼミナール』)をこころがけましょう。「わたしは」「思う」 「感じる」「考える」はつかわず、主語を隠すことにつながる受動態は可能なかぎり回避する。
「問い」を設定して明示し、「問い」にたいする「答え」を明確に記述するべきです。余分な情報を 入れず、「そして」「ちなみに」「ところで」は不要な接続詞です。2000字であれば、せいぜいのところ、 段落数は 7,8 ていどですから、まず、段落ごとの内容をきめ、段落のなかの各文の順序をきめてから 書けば、「問い」と「答え」は照応し、不要な接続詞は入りません。漫然と書きはじめるのでなく、設計図をつくってから=見通しをたててから書くだけで、論理構成力は格段に上昇します。
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