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ハイブリッド授業をはじめました

ヒキコウモリ(漢字は「誹毀/悲喜/丕基蝙蝠」かしらん)と化して2年間をすごしました。それをこの4月の第1回の授業から、世間さまでいうところの「ハイブリッド授業」へとすべて変えたところです。4月12日(火)のゼミからでした。印象をひと言でいえば、ひとりてんてこ舞いです。

2年間の遠隔授業はそれなりに楽しく、20年以上もやっている大学の授業に変化をもたらしてくれました。アタシの形式はLMSであらかじめPDF資料を配布し、授業の時間帯にはMP4のスライド動画を視聴したあとで気になったことをテキストチャットでやりとりしてすすめ、授業後にリアクションペーパーを作成して提出するものです。オンライン会議システムの場合、対面授業からあまり変化なく、とくに質問や意見が出てきません。90分間、ずーっと教員がしゃべっていても気にしないみたいでした。ところが、テキストチャットですと顔が見えていないからか、こちらがクイズを出してみると参加者のほぼ全員が答えをかえしてくれます。「気になるところがありますか」とたずねて記入を待っていると、記入しないことがほぼありません。Slack や Discord などでは「○○が記入しています」と表示してくれますから、誰かが書いていると「ひとりじゃない」と安心して自分も発言できる気がします。すると、リアクションペーパーの第1問でたずねる「今日の授業でもっとも重要なことは何でしたか。その内容を記述してください」への回答がとてもよい=授業の理解度が高くなる傾向が見られました。リアクションペーパーへの回答づくりも、いくつもの授業の履修者ひとりひとりに返すのはそれなりに時間と労力が必要でしたけれど、読者のページにおける編集部がするやりとりのようで楽しく感じてもいました。

ハイブリッドへ転換したいま、オンライン会議システムの一方通行的な静けさ、平板なやりとり、もりあがらなさ(笑)を実感しています。わずかながらも室内にいる人たちは反応してくれますし、ちょっとした視線の移動やうなづきや笑いを共有できますけれど、画面の向こう側からはリアクションで 👏 や 👍 や 🙏 の返ってくるのがせいぜいです。Comment Screen でもひと言が流れるくらい。多くの宿題をかかえながら試行錯誤をしています。

技術的には、演習をおこなう教員室内は iPod touch やお古の iPhone をつかってオンライン会議システムにログインします。こいつらの役目はそ教室の画像と音声をひろい、ほかの遠隔参加者の音声を室内にとどけることです。自分のデスクトップである2代目 Mac mini(3月に新調したばかり)はログインして会議を開始しますけれど、「オーディオに接続」の画面で参加をせず、接続をうながす状態のままで使います。こうしないと、遠隔授業をはじめたいっちゃん最初に Google Meet をおなじ室内で Chromebook と MacBook Air と Mac mini の3台で試したときとおなじく、大ハウリング合戦になってしまうからです。

講義室では遠隔参加者の音声を室内にとどけるのが iPod touch では不安ですし、かといって iPad Pro 10.5 & 12.9 をただそれだけのためにもちいるのはもったいないですから、手持ちの Web カメラであるロジクール社の C920 Pro を三脚に固定して最後列に置き、教室カメラ&マイクにしました。いまのところ、画像や音声で不満の声は聞いていません。ただし、問題は C920 がUSBの有線接続であることです。ご存知のとおり、USBケーブルは長さ5メートルが上限であり、わが社がいかにこぢんまりとしたところであっても講義室の最前列と最後列はゆうに5メートルは超えます。しかたがないので、これも手持ちのブースタケーブル(5メートル1本)にあらたに購入した5メートルをつないでやりくりすることにしました。

というわけで、4月1か月をやりくりして判明した最大の問題は準備にかかる時間です。休み時間10分のうち、まるまる10分を使ってようやく間にあいます。講義室へ入って机とリモコンの消毒をしたあと、PCと iPad を起動させて学内無線LANにログインし、5メートル×2本のブースタケーブルをぐりぐりとのばしてなじませ、折りたたみ式の三脚の足を伸ばし、最後列に設営してケーブル経由でPCにつなぎ、さらに、PCにもどってオンライン会議システムにログインして会議を開始し、待っている遠隔参加者を入室させなければなりません。何かね、ほんとにね、頭のなかを整理しておかないとちょっとしたことで爆発しそうになります。

そもそもハイブリッドでやれといっておきながら、そのやり方の確認も、必要な機材も、全部が全部、現場まかせです。えらい人は「ハイブリッド授業のできる教室をととのえる」とかいっておきながら、この状態をどのように見ているでしょうか。アタシは20年近く前にまだ講義室にプロジェクタもスクリーンもなく、自腹でととのえたこの二つを担いで、さらにはPC(ThinkPad Tablet を使っていました)をバッグに入れて授業をやりにいっていました。あのころの重い荷物がよみがえったかのようです。

それでつぶやいたのが、
歴史はくり返す、一度目は悲劇として、二度目は笑劇として(たしかマルクス
でした。笑っちゃうね。

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